私が表現法と出会ったのは9年前。当時、ピアノ専攻生として勉強を続けていくことに大きな疑問を抱き、演奏とは何か、音楽とは何か、ピアノを演奏していても首をかしげることがしばしでした。そんな頃表現法と出会いました。これが自身が音楽を続けていけるかどうかの最後の道となり、師である稲森氏の教えを請い、門を叩きました。
 そしてわずか数ヶ月でとても驚異的な体験をしました。忘れもしないモーツァルトのロンド。緩やかなテンポの曲がもともと苦手でしたが、バランス、フレージング、アクセント等、今までと違うアプローチの様々な分析をし、とくにリズムに関する勉強は表現や感じ方に影響を与える要素を持っており、今までの概念が180度変わりました。冒頭の2小節をマスターするのに何週間も費やしました。譜面にないことを読み取る(感じ取る)ので、大変な労力と苦労を要します。はじめはこのペースで間に合うのかと不安にもなりましたが、一度理解してしまうと他のところの動きも見えるのです。そして試験の結果は最高位。首をかしげるどころか思わず笑みが出てしまうほど音楽が見え、不安無く演奏できました。体が震えました。
 そして脅威の体験はその後も続き、コンクール、卒業試験においても好成績を残すことができました。もちろん成績はあくまで結果であって、それが目的ではないのですが、私が表現法について最も素晴らしいと思うのは、演奏が見えてくるということでした。自分がしていることが完全に把握されるのです。
 そして、もうひとつの体験として演奏者が最も苦手とする暗譜の作業がなくなったことです。このメソッドにおいてとても細やかに、分析、実習していくのですから、音楽の形態が完全に頭に入ってしまうのです。演奏する内容が完全に理解(意識)されているならば自由な表現が可能になり、その結果弛緩した状態で演奏ができるのです。そしてそれは暗譜演奏における不安を取り除く要素にもなります。音楽的理解が充実し不安要素もなくなれば、その結果生まれる演奏は、音楽をする喜びに満ちたものになり、そこから生まれ得る個性的な演奏が、人々に感動を与えるのではないでしょうか。
 私にとって表現法は音楽だけでなく自分自身を大きく成長させてくれました。当時あれほど悩んだのが嘘のように、私は演奏することに至高の喜びを感じつつ、現在も研鑽を続けています。回を重ねるたびに新たな発見があり、ますます表現法の魅力にとりつかれています。指導にも大いに活用し、その効果も体験しています。この研究に終わりが来ることはきっとないでしょう。このメソッドの真価、素晴らしさをぜひたくさんの方に体験して頂きたいと思います。

高安かおり(東京コンセルヴァトアール尚美音楽社会研究コースピアノ演奏専攻卒、リュシーメソッド公認ピアノ講師。)

 僕が最初にこのレッスンを受けた時、ここでのレッスンと他のレッスンとの違いが明らかであることをまず感じた。それというのも、曲をもっていって弾くのではなく、ここの教室独自の教則本を使ってレッスンをするからだ。この教室の一番の特徴は、楽譜を見た時にすぐに自分の力だけで質の高い表現を見つけられるようになることだ。そのために学ぶのは、曲にはリズムによって分けられるフレーズがあって、その中に様々なアクセントが存在する等々である。これらは自分が通っていた学校では学ぶことができなかった。そこで行っていたレッスンでは、もちろんそれなりに勉強になることはたくさんあったが、自分で最初から曲の表現を作っていけるようになるような内容ではなかった。

鈴木彰久(国立音楽大学教育科卒、指揮者)

 私がこのリュシーメソッドを習いに行こうと思ったのは、子供たちにピアノを教えるにあたって、もっと自分の中で明確な理論が欲しかったことが一つと、リトミック教育をもっと芯から理解したいと思ったことがきっかけでした。しかし、レッスンに通い始めて音大では教えてもらえないことがたくさんありました。
 音楽の3大要素のメロディー、リズム、和声とは知っていても、そのリズムとは何か?とか、フレージングって何?とか学生の頃には疑問にも思わずにきた自分が、子供たちを教える立場になった時にはじめて、答えられない自分に気付き、根本から音楽を学ばなければいけないと思いはじめました。
 またここで学んでいくうちに、自分で楽譜の読譜(音楽を理解すること)が出来るようになったことが私の中での一番大きな変化でした。というのも、今まで音大でピアノのレッスンを受けていても、先生から与えられた楽譜で曲を弾き、その楽譜に書かれているとおりに弾いてきた私にとって、自分自身でフレージングというものを考え直すことも、ましてや疑問にも思わなかったからです。
 今では、なぜこのフレーズはここで切れているのか、なぜここにアクセントがついているのかまで、楽譜に表されていなくても自分で曲を分析(読譜)ができるようにまでなりました。
 これは、一生音楽に携わっていきたいと思っている私にとって、生涯かけがえのない宝物になることは間違いないです。そして、稲森先生は、本物の音楽を教えてくださった恩師です。 

伊三部弘子(国立音楽大学教育科卒、ピアノ講師)

 今までは、声のことと、歌詞の内容だけを必死に勉強していましたが、演奏表現法を習うことで、ひとつの作品にとらわれず、どんな作品にも応用がきくフレーズの作り方を学びました。“楽譜に全てが表現されている”ということは誰もが言うことですが、拍子やリズムを理解するということは、その曲を何度も演奏して慣れるということではなくて、ひとつひとつ理論があるということなんだと知りました。
 勉強を始め一年が経ち、一番変化したのは“耳”です。声が良くても感動しないし、感情が込められていても聴き手に届かないというのは、ほとんどが音楽に逆らって演奏しているからではないかと思えてきました。
 いろんな演奏や録音を聞くと、今勉強している表現法が理解できている演奏は、本当に“プロ”であり、多くの人に共通して感動させる音楽になると思いました。そうなれるよう、努力したいと思います。 

佐々木淑美(国立音楽大学大学院歌曲専攻修了)

 演奏表現法を学んで、まず、曲に対する意識と楽譜に対する意識が変わりました。今までは、譜面どおりに弾くこと、そしてその譜面に対して何の疑問も抱かなかったのですが、今はリズム、フレーズ、拍子、強弱全てに関心を持ち、楽譜が訴えていることを感じ取る楽しみを覚えました。それらに関心を持つということは、自分の演奏に対してもさらに深い関心を抱けるということでもあります。私の演奏も、勉強し始めた頃と比べると、だいぶ変わってきたと思います。しっかりと曲を分析することにより、自分の演奏に自信を持てますし、いわゆる「個性のない演奏」から抜け出すきっかけにもなります。これからももっと自分だけの表現ができるように頑張っていきたいです。

松岡祐子(国立音楽大学ピアノ科卒)

  自分自身の演奏だけでなく、様々なピアノ曲を指導する立場になって曲を作っていく中で「感」に頼るだけではなくもっと確かな裏付けのある指導をしたいと思い始めた頃に、このリュシーメソッド「演奏表現法」に出会いました。それは、楽譜に書かれた音を様々な角度から分析していく作業を通して「表現」の形を解り易く立体的に掘り起こしていく作業です。
  具体的には、このメソッドを習い始めてすぐに「バランス」について習います。すぐに私自身の耳が変わり、メロデイーラインの聴こえ方にとても敏感になりました。曲を司るメロデイーラインとその他の声部の扱いをはっきり分ける事を意識させるだけで生徒の音も響きがクリアになりました。
 バランスが完成したところで次は拍子の感覚を的確に捉えるための「メトリックアクセント」を見ていきます。これは決して無機質なアクセントを拍子の度に力任せに付けるのではなく、目立たせずに拍感を感じられるようになり、テンポが安定しない生徒には曲の鼓動を乱すことなく推進できる様になり大変効果的です。
 そして次に、曲のメロデイーラインを基に、どこからどこまでを一息で扱うのかという事を「フレージング」していきます。この作業は例えると文章に正しく句読点が打て段落がつけられる様に成ると言う非常に大事な作業だと思います。
 続いて「リズムアクセント」の法則にしたがってフレーズ内の息遣いを感じられる様になるため、指導の時に生徒の隣で実際に歌ってみると、棒弾きだった子も自然に生き生きとフレーズがスムーズに流れるようになっていきます。
 その次は「エクスプレッシブアクセント(表現的アクセント)」を細部に渡り分析していきます。これは拍子・リズム・調性・和声上で例外的な音を探し、そこに表現上の緊張感を意識する、今までの作業の中で最も演奏家の技量が示されるとまで言える細心の注意を払うべき作業です。シンコペーションや反復音、三連符、変奏的リズム、音程の幅、装飾音、刺繍音にどの程度のテンションをかけるか、また転調・移旋をチェックし更に和声分析を行い、増減音程・非和声音・不協和音を見抜きそれらの響きを注意深く分析し、表現としてどのくらいのアクセントをつけていくか、そのアクセントを生かすのに必要な緊張(アッチェレ)弛緩(リット)そして音の色合い(ニュアンス)を決定していきます。
 この様に緻密に音楽を組み立てていくと共に、奏者としてそこに求められる音はどんな音か実際に弾いて聴かせる事が説得力を持った指導者なのだろうと痛感しています。この「演奏表現法」はより深く確信を持てる指導を志す者にこそ必要な技術であると断言できます。

渡辺彩子(国立音楽大学付属音楽高等学校ピアノ講師)

 10年ほど前に習い始めた音楽オイリュトミー。
ぎくしゃくした自分の動きに、何かが足りないとその理由を探していた時にリュシーの本、「音楽のリズム」を見つけた。
何か大切なことが書いてある、という直観があったが、聞きなれない言葉の数々。
音楽にどしろうとの私には難しすぎるわ、と1度目はギブアップ。
それから数年後、この講座に出会った。

 「リズムとは、動いて止まるひとかたまりの立体的な運動体」
刺激的なこの言葉で始まった講座の第1回目。第1章にちりばめられた、リュシーの音楽についての言葉は美しかった。
音楽オイリュトミーは「見える歌」と呼ばれ、“音楽自体”を人間の体を使って空間に見えるようにする動きの芸術だ。
だから、この音楽オイリュトミーをやっている人間にとっては、リズムを空間的なものとして表現したこれらの言葉は、なじみ深いものだった。
半年間、次の回が待ち遠しかった。

拍子とリズム。メトリックアクセント、リズムアクセント、パセティックアクセント。そしてフレージングと拍子の訂正。
この講座によって、旋律の高低にしか意識を向けていなかった音楽の聴き方が変化し、私のオイリュトミーに足りなかった「何か」を見つけられた気がしている。
それが本当にそうなのかは、これからの私のオイリュトミーに現れてくるだろう。現れてくるはずだ。そう予感している。

服部節子(2011年度後期講座受講生)

  1回目の講座では、馴染みのない言葉(イクタス、リズムアクセント、 パセティックアクセントなど)に頭が混乱していましたが、毎回丁寧に説明していただき、講座が進むごとに、譜面を見ながら自分の中にイメージが出来上がっていく感覚が出てきて、今までにない可能性を感じました。もともと譜面を読むのが遅く、分析も苦手、何度も練習して勘で表現していたものがリュシーメソッドのおかげで分析することのおもしろさと充実感を知ることができました。
習得するには、まだまだ時間はかかることですが、知っているかいないかの違いは、とても大きいものだと思います。
これから様々な曲に向き合い、自分の楽器に生かしていけるようになることを楽しみに勉強し続けていきます。
稲森先生、ありがとうございます!

石川智映子(2020年度講座体験者、マリンバ奏者)